「南院の競射」(道長と伊周の弓争ひ)『大鏡』読解のコツ《完全版》

※この記事では、現代語訳を要点ごとに上げています。一文ごとの品詞分解と詳しい現代語訳は品詞分解と現代語訳のページでご確認ください。

目次

はじめに

 今回は『大鏡』の藤原道長と藤原伊周の弓の競射をするお話です。教科書には「弓争い」「競べ弓」「南院の競射」など様々な題名で載せられています。『大鏡』については別ページで詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。

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「南院の競射」(弓争ひ・競べ弓)要点・あらすじ・現代語訳〈第1回〉

 古文を読解する6つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。

STEP
本文を読む

何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

STEP
登場人物を確認する

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。

STEP
内容を大まかに把握し、説明する

簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。

STEP
理解しにくい箇所の解説を見る

古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

STEP
改めて本文を解釈する

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。

STEP
敬意の方向を確認する

今回は敬語がたくさん出てきているので、敬意の方向をまとめて確認します。

本文を読む

 何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。

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帥殿(そちどの)の南院(みなみのゐん)にて人集めて弓あそばししに、この殿(との)(わた)らせ給(たま)へれば、思ひかけずあやしと、中関白殿(なかのくわんぱくどの)(おぼ)し驚(おどろ)きて、いみじう饗応(きやうおう)し申(まう)させ給(たま)うて、下﨟(げらふ)におはしませど、前に立て奉(たてまつ)りて、まづ射(い)させ奉らせ給ひけるに、帥殿の矢数(やかず)、いま二つ劣り給ひぬ。中関白殿、また御前(おまへ)に候(さぶら)ふ人々も、「いま二度(ふたたび)(の)べさせ給へ。」と申して、延べさせ給ひけるを、安(やす)からず思(おぼ)しなりて、「さらば、延べさせ給へ。」と仰(おほ)せられて、また射させ給ふとて、仰せらるるやう、「道長が家より帝(みかど)・后(きさき)立ち給ふべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、同じものを中心(なから)には当たるものかは。次に帥殿射給ふに、いみじう臆(おく)し給ひて、御手(おほんて)もわななく故(け)にや、的(まと)のあたりにだに近く寄らず、無辺(むへん)世界を射給へるに、関白殿、色(いろ)青くなりぬ。また入道殿射給ふとて、「摂政(せつしやう)・関白すべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、初めの同じやうに、的(まと)の破るばかり、同じところに射させ給ひつ。饗応(きやうおう)し、もてはやし聞こえさせ給ひつる興(きよう)もさめて、こと苦(にが)うなりぬ。父大臣(ちちおとど)、帥殿に、「何(なに)か射る。な射(い)そ、な射そ。」と制(せい)し給ひて、ことさめにけり。
(『大鏡』より)

 文章を読むことができたら、下の「登場人物の確認」「内容を簡単に理解」を読んで、自分の理解と合っていたかを確認します。

登場人物の確認

・帥殿  ・この殿(道長・入道殿)  
・中関白殿(父大臣)  ・御前に候ふ人々

上記のそれぞれが誰を指すか、それは次の系図を見ながら解説していきましょう。

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上記の「帥殿」とは「藤原伊周(これちか)です。「帥」とは、太宰権帥という位のことで、伊周は長徳の変(花山天皇に矢を射る事件)により内大臣からこの位に降格されました。この人物は「藤原道隆」の息子です。「藤原道隆」は大鏡では「中関白殿」と呼ばれます。伊周は、道隆の死後(995年)に 摂政関白の座を巡って叔父の「道兼」(粟田殿)・「道長」と争うことになります。まずは道兼が関白になりますが、道兼はなんと関白在任後わずか10日ほどで亡くなってしまいます。次の関白の座を伊周と道長が激しく争いますが、結果としては、道長に「内覧」の宣旨が下り、道長が伊周を越えて右大臣に昇任します。道長はあえて関白にはならずに、藤原氏の長者並びに天下執行の宣旨を獲得します。

「道隆」「道兼」「道長」は兄弟で、父「兼家」と「時姫」との息子たちです。道隆は953年生まれ、道長が966年生まれと言われていますので、道隆と道長は13歳離れています。また、道隆の長男である「伊周」は974年生まれですので、道長と伊周は8歳しか離れていません。今回の「南院の競射」(弓争い・競べ弓)は、994年8月の話ですので、道隆41歳、道長28歳、伊周20歳です。翌年に関白道隆は亡くなりますので、すでに伊周と道長は政治上はライバル関係になっています。

お話を簡単に理解(あらすじ)

・帥殿が、父道隆邸の南の院で人々と弓の競射を行う
・叔父の道長が急に道隆邸にやってくる
・道長が先攻で、伊周に「2つ」上回る
・道隆が「二度」延長せよと言って、延長させようとする
・道長は不満を覚えながらも承諾して、再度矢を射る

理解しにくい箇所の解説を見る

 本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。

  • 弓あそばししに、この殿わたらせたまへれば、思ひかけずあやしと中関白殿おぼし驚きて、
  • まづ射させたてまつらせたまひけるに、
  • 御前にさぶらふ人々
  • 「いま二度延べさせたまへ。」
  • やすからずおぼしなりて、

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敬意の方向を確認する

この文章は「大宅世継」が話をしている場面なので、地の文に見えるところは、すべて会話文です。ですので、「作者から◯◯へ」ではなく「世継から◯◯へ」となります。また、全文が会話文なので、敬意の段階が一段上がります。つまり、通常二重尊敬にならない人物にも二重尊敬が使われたり、身分がそれほど高くない人物にも尊敬語が使われたりします。このあたりに注意して、敬意の方向を確認していきましょう。敬意の方向の基本的な考え方は、以下のボタンをタップして確認してください。

では、この文章の「敬意の方向」を確認します。赤線部が尊敬語・青線部が謙譲語です。

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「南院の競射」(弓争ひ・競べ弓)読解のコツ 第2回

 では、始めていきましょう。今回も古文を読解する5つのコツをお話します。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。

STEP
本文を読む

何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

STEP
登場人物を確認する

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。

STEP
内容を大まかに把握し、説明する

簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。

STEP
理解しにくい箇所の解説を見る

古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

STEP
改めて本文を解釈する

きっと、随分と読めるようになっているはずです。

本文を読む

↑タップして画像を拡大できます

 帥殿(そちどの)の南院(みなみのゐん)にて人集めて弓あそばししに、この殿(との)(わた)らせ給(たま)へれば、思ひかけずあやしと、中関白殿(なかのくわんぱくどの)(おぼ)し驚(おどろ)きて、いみじう饗応(きやうおう)し申(まう)させ給(たま)うて、下﨟(げらふ)におはしませど、前に立て奉(たてまつ)りて、まづ射(い)させ奉らせ給ひけるに、帥殿の矢数(やかず)、いま二つ劣り給ひぬ。中関白殿、また御前(おまへ)に候(さぶら)ふ人々も、「いま二度(ふたたび)(の)べさせ給へ。」と申して、延べさせ給ひけるを、安(やす)からず思(おぼ)しなりて、「さらば、延べさせ給へ。」と仰(おほ)せられて、また射させ給ふとて、仰せらるるやう、「道長が家より帝(みかど)・后(きさき)立ち給ふべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、同じものを中心(なから)には当たるものかは。次に帥殿射給ふに、いみじう臆(おく)し給ひて、御手(おほんて)もわななく故(け)にや、的(まと)のあたりにだに近く寄らず、無辺(むへん)世界を射給へるに、関白殿、色(いろ)青くなりぬ。また入道殿射給ふとて、「摂政(せつしやう)・関白すべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、初めの同じやうに、的(まと)の破るばかり、同じところに射させ給ひつ。饗応(きやうおう)し、もてはやし聞こえさせ給ひつる興(きよう)もさめて、こと苦(にが)うなりぬ。父大臣(ちちおとど)、帥殿に、「何(なに)か射る。な射(い)そ、な射そ。」と制(せい)し給ひて、ことさめにけり。
(『大鏡』より)(『大鏡』より)

前回は「「さらば、延べさせ給へ。」と仰せられて」まで読みました。今回はその続きです。文章を読むことができたら、下の「登場人物の確認」「内容を簡単に理解」を読んで、自分の理解と合っていたかを確認します。

登場人物の確認

・帥殿  ・中関白殿(父大臣)
・この殿(道長・入道殿)  

登場人物は前回と同じです。それぞれが誰を指すかは、前回の系図を参照してください。

お話を簡単に理解(あらすじ)

・帥殿が、父道隆邸の南の院で人々と弓の競射を行う
・叔父の道長が急に道隆邸にやってくる
・道長が先攻で、伊周に「2つ」上回る
・道隆が「二度」延長せよと言って、延長させようとする
・道長は不満を覚えながらも承諾して、再度矢を射る
ーーーここから第2回ーーー
・「自分の家から帝や后が立つなら矢が当たれ」と言って矢を射る
・矢は的の中心に当たる
・帥殿は気後れしてしまい、的を大きく外す
・次の道長の番では「自分が摂政や関白をすべきなら矢が当たれ」と言って射る
・矢は的が破れるくらいの強さで中心に当たる
・道隆たちは興がさめて、競射をやめさせる。

理解しにくい箇所の解説を見る

 本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。

⑥同じものを中心には当たるものかは
⑦いみじう臆し給ひて、御手もわななく故にや、
⑧関白殿、色青くなりぬ。
⑨何か射る。な射そ、な射そ

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敬意の方向を確認する

続けて、後半部分の「敬意の方向」も確認しておきましょう。この文章は「大宅世継」が話をしている場面なので、地の文に見えるところは、すべて会話文です。ですので、「作者から◯◯へ」ではなく「世継から◯◯へ」となります。赤線部が尊敬語・青線部が謙譲語です。

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おわりに(テスト対策へ)

今回は、『大鏡』の「南院の競射」(弓争い・競べ弓)についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。

『大鏡』の他の文章について

『大鏡』は他にも面白い文章がたくさん出てきます。ぜひ多くの文章に触れてみましょう。(以下からも購入することができます)また、『大鏡』について詳しく説明したページもありますので、そちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

古文指導歴25年。「受けるだけで15点上がる」古文の先生。難しい文法用語をかみくだいて、テストに直結する形で教えるのが得意です。無料サイト「スマホで学ぶ古文」でも150記事以上を公開中。

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