はじめに
今回は『大鏡』の一節で、歴史的にも有名な「寛和の変」のお話です。教科書では「花山天皇の出家」(花山院の出家)という題名で載せているのがほとんどです。ここでの「花山天皇」は一般的に「かさんてんのう」と読むみたいです。『大鏡』については別のページで詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。

「花山天皇の出家」要点・あらすじ・現代語訳〈第1回〉
では、古文を読解する5つのコツをお話しましょう。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

step4とstep5は並行して行います。きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。


次の帝、花山院の天皇と申しき。冷泉(れいぜい)院第一の皇子(みこ)なり。御母、贈皇后宮懐子(くわいし)と申す。
永観(えいくわん)二年八月二十八日、位につかせ給ふ、御年十七。寛和(くわんな)二年丙戌(ひのえいぬ)六月二十二日の夜(よ)、あさましく候(さぶら)ひしことは、人にも知らせさせ給はで、みそかに花山寺(はなやまでら)におはしまして、御出家(すけ)入道せさせ給へりしこそ。御年十九。世を保たせ給ふこと二年。そののち二十二年おはしましき。
あはれなることは、おりおはしましける夜は、藤壺(ふぢつぼ)の上の御局(みつぼね)の小戸(こど)より出でさせ給ひけるに、有明(ありあけ)の月のいみじく明かかりければ、「顕証(けんしよう)にこそありけれ。いかがすべからむ。」と仰せられけるを、「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽(しんし)・宝剣渡り給ひぬるには。」と、粟田(あはた)殿のさわがし申し給ひけるは、まだ帝出でさせおはしまさざりける先に、手づから取りて、春宮(とうぐう)の御方に渡し奉り給ひてければ、帰り入らせ給はむことはあるまじく思して、しか申させ給ひけるとぞ。
さやけき影をまばゆく思し召しつるほどに、月の顔にむら雲のかかりて、少し暗がりゆきければ、「わが出家は成就するなりけり。」と仰せられて、歩み出でさせ給ふほどに、弘徽殿(こきでん)の女御の御文の、日ごろ破(や)り残して御身も放たず御覧じけるを思し召し出でて、「しばし。」とて、取りに入りおはしましけるほどぞかし、粟田殿の、「いかにかくは思し召しならせおはしましぬるぞ。ただ今過ぎば、おのづから障(さは)りも出でまうで来なむ。」と、そら泣きし給ひけるは。
(『大鏡』より)
文章を読むことができたら、下の「登場人物の確認」「内容を簡単に理解」を読んで、自分の理解と合っていたかを確認します。
登場人物の確認
・花山院の天皇(帝)
・粟田殿(藤原道兼)
花山天皇が、出家してしまうお話です。花山天皇は、藤原兼家(東三条殿)の兄藤原伊尹(これまさ)の娘懐子(かいし)と冷泉天皇との皇子で、永観二年(984年)に即位しました。最愛の妻(女御)である忯子(しし・よしこ)が亡くなってしまったショックで、つきっきりで慰めてくれた藤原道兼を信じて、ともに出家をしようと東山の花山寺へ向かい、実際に出家をしてしまいます。ただし、道兼は直前で逃げ帰ってしまいます。このお話は、NHKの大河ドラマ「光る君へ」でも丁寧に描かれていました(第10話、第11話)。
お話を簡単に理解(あらすじ)
・花山院の紹介
・帝(花山天皇)は花山寺に向かう日の夜、外が月夜で明るいので、外に出ることを渋る
・粟田殿(藤原道兼)はもう止めることはできないと出発を促す
・月に雲がかかって、帝は出発をしようとする
・帝は弘徽殿の女御(忯子)の手紙を置いてきたことを思い出して宮中に戻ろうとする
・粟田殿は、うそ泣きをして、宮中に戻らずに出発することを強く促す
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
- 顕証にこそありけれ
- とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣渡り給ひぬるには。
- 手づから取りて、春宮の御方に渡し奉り給ひてければ、
- さやけき影をまばゆく思し召しつるほどに
- 「ただ今過ぎば、おのづから障りも出でまうで来なむ」とそら泣きし給ひけるは。
「花山天皇の出家」読解のコツ 第2回
では、始めていきましょう。今回も古文を読解する5つのコツをお話します。以下の順に確認していくと以前よりも飛躍的に古文が読めるようになるはずです。
何度も本文を読んでみて(できれば声に出して)、自分なりに文章の内容を想像してみます。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」「どのようなことを言っているか」「どのような行動をしているか」を考えていきます。

本文にどのような人物が出てきているか、確認します。紙で文章を読むときは、鉛筆などで▢をつけるとよりよいでしょう。
簡単でもよいので、誰かに「こんなお話」だと説明できる状態にします。ここでは、合っているかどうかは関係ありません。今の段階で、こんな話じゃないかなと考えられることが大切なのです。考えられたら、実際にこの項目をみてください。自分との違いを確認してみましょう。
古文を読んでいると、どうしても自力では分からない所がでてきます。ちなみに、教科書などでは注釈がありますが、注釈があるところは注釈で理解して構いません。それ以外のところで、多くの人が詰まるところがありますが、丁寧に解説しているので見てみてください。

きっと、随分と読めるようになっているはずです。
本文を読む
何度も本文を読んでみて、自分なりに文章の内容を想像してみましょう。特に初めて読むときは、分からない言葉があっても意味調べなどせずに読みます。分からない言葉がある中でも文章の中に「誰がいるか」、「どのようなことを言っているか」、「どのような行動をしているか」を考えていきます。


さて、土御門(つちみかど)より東(ひむがし)ざまに率(ゐ)て出(い)だし参(まゐ)らせ給(たま)ふに、晴明(せいめい)が家の前を渡らせ給へば、自(みづか)らの声にて、手をおびたたしく、はたはたと打ちて、「帝王(みかど)おりさせ給ふと見ゆる天変(てんぺん)ありつるが、すでになりにけりと見ゆるかな。参(まゐ)りて奏(そう)せむ。車に装束(さうぞく)とうせよ。」と言ふ声、聞かせ給ひけむ、さりともあはれには思(おぼ)し召(め)しけむかし。「かつがつ、式神(しきがみ)一人、内裏(だいり)に参れ。」と申しければ、目には見えぬものの、戸を押しあけて、御後ろをや見参らせけむ、「ただ今、これより過ぎさせおはしますめり。」といらへけるとかや。その家、土御門(つちみかど)町口(まちぐち)なれば、御道なりけり。
花山寺(はなやまでら)におはしまし着きて、御髪(みぐし)おろさせ給ひてのちにぞ、粟田殿(あはたどの)は、「まかり出でて、大臣(おとど)にも、変はらぬ姿いま一度見え、かくと案内(あない)申して、必ず参り侍(はべ)らむ。」と申し給ひければ、「朕(われ)をば謀(はか)るなりけり。」とてこそ泣かせ給ひけれ。あはれに悲しきことなりな。日ごろ、よく、「御(おほん)弟子(でし)にて候(さぶら)はむ。」と契(ちぎ)りて、すかし申し給ひけむが恐ろしさよ。
東三条(とうさんでう)殿(どの)は、もしさることやし給ふと危(あや)ふさに、さるべくおとなしき人々、なにがしかがしといふいみじき源氏の武者(むさ)たちをこそ、御送りに添へられたりけれ。京のほどは隠れて、堤(つつみ)の辺(わたり)よりぞうち出(い)で参りける。寺などにては、もし、おして人などやなし奉(たてまつ)るとて、一尺(ひとさく)ばかりの刀どもを抜きかけてぞまもり申しける。(「大鏡」より)
文章を読むことができたら、下の「登場人物の確認」「内容を簡単に理解」を読んで、自分の理解と合っていたかを確認します。
登場人物の確認
・花山院の天皇(帝)
・粟田殿(藤原道兼)
・安倍晴明
・安倍晴明の式神
・東三条殿(藤原兼家)
・さるべくおとなしき人々、なにがしかがしといふいみじき源氏の武者たち
中心の登場人物は、前回と同じで「花山天皇」と「粟田殿(藤原道兼)」です。それに加えて、「安倍晴明」と「東三条殿(藤原兼家)」が脇役で登場します。その他の人物は関係者程度です。
下の図に東三条殿と粟田殿が出てきます。確認しておきましょう。

お話を簡単に理解(あらすじ)
・花山院の紹介
・帝(花山天皇)は花山寺に向かう日の夜、外が月夜で明るいので、外に出ることを渋る
・粟田殿(藤原道兼)はもう止めることはできないと出発を促す
・月に雲がかかって、帝は出発をしようとする
・帝は弘徽殿の女御(忯子)の手紙を置いてきたことを思い出して宮中に戻ろうとする
・粟田殿は、うそ泣きをして、宮中に戻らずに出発することを強く促す
ーーーここから第2回ーーー
・帝一行は宮中から出て、安倍清明の家の前を通る
・安倍晴明は帝が退位することを天変で知り、宮中に向かおうとする
・安倍晴明は式神を宮中に向かわせるが、たった今帝が通り過ぎたと報告を受ける
・花山寺に到着した帝は出家なさる
・粟田殿は、一度退出してまた帰って来ると伝える
・このとき、やっと花山天皇は自分がだまされたことを知って、涙する
・粟田殿の父親(東三条殿=兼家)は、もしものときに備えて分別のある者や武者を護衛に付けて、粟田殿を出家させないようにしていた
理解しにくい箇所の解説を見る
本文を読んで自分で内容を考えていったときに、おそらく以下の箇所が理解しにくいと感じたでしょう。その部分を詳しく説明します。解説を読んで、理解ができたら改めて本文を解釈してみてください。
⑥清明が家の前を渡らせ給へば、
⑦すでになりにけりと見ゆるかな。参りて奏せむ。
⑧さりともあはれには思し召しけむかし。
⑨かくと案内申して必ず参り侍らむ。
⑩もしさることやし給うふと危ふさに、さるべくおとなしき人々〜、御送りに添へられたりけれ。
おわりに(テスト対策へ)
今回は、『大鏡』の「花山天皇の出家」についてお話しました。一通り学習を終えたら、今度はテスト対策編もご覧ください。
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